10月中旬朝のベリー園、雲海が村を囲む。秋の空に羊蹄山がくっきり 夏は樹下育苗に限る いよいよ菜園も最終ステージに突入しました。それでもおしまいというわけではなく秋本番と強気です。 強気を支えているのがアブラナ科の野菜、ブラシカたちです。キャベツ、ケール、黒キャベツ、ブロッコリー、ブロッコリーニ(スティックブロッコリー)。 葉を巻き始めたキャベツは日に日に球がしっかりしてきました。そのスピードから彼らの焦りが伝わってきます。球を大きくしないと雪が積もってしまう早く早くとつぶやきながら競争で巻いています。けなげですね。今年3回目、3期生です。 それはブロッコリーも同じ。定植後1ヶ月もしないうちから花蕾をつけ始めました。寒さに反応しているのですね。初夏に植えた2期生はアオムシと戯れながら、怠惰な夏の日々を過ごしていたのに3期目のブロッコリーは大きな花蕾を収穫した後もせっせと脇芽作りに励んでいます。 ブロッコリーは花蕾を食べるという画期的な特性もさることながらとてもユニークな野菜です。春一番に温室に定植したブロッコリーも少し遅れて菜園に定植したブロッコリーも秋が深まった今でもせっせと花蕾作りに励んでいます。いつ抜いたらいいものやら、決断ができません。 温室のブロッコリーはこのまま放っておくと冬を越して春には復活し、また花蕾をつけ始めるのではと期待しています。ゾンビブロッコリー。どんなに貧弱な花蕾でも春先には嬉しいものです。 今年、栽培したのはドシコという在来種のブロッコリー。F1のそれに比べると花蕾が大きめで多少だらしない感じに拡がってしまったけど家庭菜園では問題なし。メインの大きな花蕾を収穫した後は小さな花蕾が次々に発生してその効率のよいこと。家庭菜園の大家によるとドシコのような古い在来種は収穫後も花蕾がたくさん発生しやすいそうです。来年もドシコにしましょう。ドシコさんよろしく、名前も親しみやすいし。 現在3期目を迎えるブラシカの定植サイクルが順調なのは、樹下育苗のおかげでしょう。夏の高温多湿が苦手なブラシカは夏の育苗がむずかしい。そこで育苗箱を温室から出して高さ3メートルほどのサンシュウの木陰に移動させました。葉が茂ったサンシュウなら強い風や夏の陽射しから苗を守ってくれるかもしれないと考えたからです。そのおかげか今夏の超異常気象下でもブラシカの苗は普通に育ちました。暑くて風通しのよくない温室よりサンシュウの木陰の方が苗には快適だったようです。同じく樹下育苗したルッコラもスナック豌豆もまあまあ順調に育ちました。夏は樹下育苗に限る、これは新発見でした。 サンシュウは春の早い時期に黄色い花をたくさん咲かせて春の訪れを知らせてくれます。それだけで十分なのに、葉が茂ればシェードとしての役割も果たしくれるのですね。おみそれしました。 10月下旬菜園風景。ブラシカ類はまだまだ元気。マリーゴールドやナスタチュームも頑張る 初雪が降った朝、菜園のブロッコリーの花蕾には薄氷が張っていた。外気温は3℃ 太陽で栽培して太陽で保存する あんなににぎやかだったトマトもさすがに衰えが目立ちます。ミニトマトは殆ど地面に落ちてしまったし、大玉トマトは青いまま震えています。今年、無謀にも12種類72株のトマトを栽培してみての感想。株数も種類も半分で十分。 トマトは調理用と生食用に大きく分かれます。調理用といっても、多少酸味が強く果肉がしまってネットリしているだけで生食しても問題はありません。生食用は果汁たっぷりで糖度が高いのが特徴です。 生食用にはミニトマトが向いています。朝の見回りついでにパクパク、日中の菜園仕事では水分補給とおやつに、夕食のサラダにももちろんミニトマトと大活躍。でも40株近く栽培したので、完熟して地面に落下したミニトマトは数知れず。ごめんなさい。10株もあれば十分でした。 今年はステラミニ、オレンジパルチェ、ホレマル、千果、フルティカ、シンディースィートを栽培。全部採種したので来年はどれを採用しようか迷うところです。結局コリもせず40株栽培してしまいそうな予感あり。 一方、加工用としては大玉の世界一、ポンテローザ、細長いサンマルツィアーノ、中玉のマッティナ、ボルゲーゼ、地這い型の楕円型トマトを栽培しました。「世界一」は戦前から戦後にかけて東京近郊で最も人気にあった生食用トマト。「ポンテローザ」にいたっては1891年にアメリカから導入されて日本の桃色系トマトの元祖となった由緒ある品種。両方とも生食しても美味しいけど大きくて効率がいいのでわが家では加工用扱い。 イタリア系のトマトは加熱すると本領を発揮するタイプなので加工専用、寒さに強くてまだ実をしっかりつけています。収穫した実はすべて冷凍トマトとして保存します。 冷凍以外にもトマトにはたくさんの保存法があります。例えばトマトソース、例えばピューレやケチャップ、果汁を搾ってトマトジュース、どれも自作するとすごく美味しいし、瓶に詰めて殺菌しておけば常温で長期保存も可能です。 できればそうしたいところですが、菜園仕事と庭仕事に明け暮れる夏の日々、キッチンでの作業にはなかなか時間が割けません。加工を先延ばしにしている内に加工されずに行き場を失うトマトが溢れることになります。 冷凍トマトなら収穫して袋に詰めてストッカーに放り込むだけだから手間いらず。菜園仕事の合間に収穫すればいいだけなので無駄にすることはまずありません。ストッカーから取り出して凍ったまま水をくぐらすと皮は簡単にむけるし、凍ったままパスタのソースに煮つめたり、スープに加えるなど水煮缶詰めと同じように手軽に使えます。 しかし冷凍という保存法について私は後ろめたい気持ちをずっと抱いてきました。 瓶詰めや缶詰めは加熱して殺菌しておけば常温で保存できるので、初期投資さえすればおしまい。一方、冷凍の場合は保存期間中はずっと電力を使い続けることになります。停電が長く続けば廃棄することにもなりかねません。 確かに冷凍は現状では簡便で無駄の少ない保存方法なのですが、それは電力を前提とした保存法なのです。 日本では昔から太陽の光と風を利用して作られたあまたの乾物類が保存食として利用されてきました。米を初めとして切り干し大根、干し椎茸、乾燥わかめやひじき、大豆やその他の豆類。乾物は日本の食卓を支えてきたともいえますね。 じゃあトマトだって乾燥してドライトマトにすればいいということになりますが、水分をたっぷり含んだトマトを乾燥させるのは至難の技。地中海やアラブの乾燥した国々ならいざ知らず、湿気の多い日本の気候は基本的に乾燥には不向きなのです。比較的湿気の少ない北海道だって同じ、乾燥半ばで必ずカビが生えてきて慌ててオーブンに放り込むことになります。日本は乾燥より発酵に適した国なのです。 そういう事情から保存用に冷凍ストッカーを2台用意して殆どの野菜は冷凍保存しています。ツル紫やモロヘイヤ、ハンダマのような南国葉物、ゴーヤーはチャンプルー用にスライスして、ブロッコリーは小房にわけて、オクラもセロリも万願寺唐辛子も冷凍、ブルーベリーやカシス、大量に収穫するベリーも冷凍です。 しかしストッカーの温度を1年中-20℃以下に維持するのにどれほどの電力を使っているのか、ずっと頭の隅に引っかかっていました。 「緑の家の屋根を直すついでに太陽光パネルを貼ったらどうかな?」 夏のある日、フジカド氏から提案がありました。緑の家というのは、今、暮らしている建物の向かいにある住宅で、時々遊びにくる次男一家が別宅のようにして使っている築30年以上になる木造の家です。 氏の唐突な新提案に対しては、通常、否定的且つ消極的態度をとる私ですが、これには即座に「それはいい!」と諸手を挙げて賛成しました。 敷地内の住宅の電力を太陽光ですべて賄おうという計画です。秋の初めには緑の家の屋根にピカピカの太陽光パネルが設置されました。予想したほど違和感はなく、数日で当たり前の見慣れた風景になりました。 蓄電量は9.5kwと大型なので、現在使用中の電気製品をフル稼働させても余裕で賄えるそうです。 大出費ではありますが、環境問題も含めて未来への投資として捉えればとても有益なものだと思います。グレタさんや斉藤幸平先生にも少しは認めてもらえるかもしれないし。 もうじき蓄電を開始する予定、太陽光ライフが始まります。 太陽に育ててもらった作物を太陽で保存する、来年は菜園も食卓も太陽依存型に転換する年にしたいと考えています。北電にも彼らが再稼働を画策する原発にも頼らず暮らせるのはとてもうれしいことです。 10/18 設置したソーラーパネルに雪降り積む。ちょっと不安になる。 ささやかな楽しみ 菜園のコスモスとハナバチ 「まさか私がキンセンカを栽培するとは思わなかった」 園芸友達がつぶやきました。 私もまさかコスモスを栽培するとは思わなかった! 花の色や草丈、花の咲く時期を考えて花を選ぶ、これぞ庭作りの醍醐味でしょう。季節を追って移り変わる庭の様子を頭に描いて、種を播いたり、苗を植えたり、球根を埋める、思い通りにならないことは百も承知。でも毎年、園芸好きは夢見つつ深く植えるのです。 園芸店では花のMIX種というのを時々目にします。数種類の花の種を詰め込んだもので、どんな花がいつ咲くか分からないけど任せなさい、悪いようにはしないからというひと袋です。 それは「花を選択する」という最大の楽しみを放棄せよと園芸好きに迫るのです。 と考えて新しいものにはすぐに手を出す私もMIX種については完全に無視してきました。 菜園にはにっくきヒルガオと頑強この上ないコーンフリーに占拠されて手の施しようがなくなってしまう区画があります。そこは菜園の入り口近くでとても目立つ場所なのです。これまではずっと見て見ぬフリをしてやり過ごしてきたのですが、「何とかした方がいいんじゃない」と非難されることしきり。何とかしたいのは山々だけど、手が回らないしなー。その時、頭をよぎったのが以前、知り合いから大量にもらったMIX種でした。あれを播いてみようか、例えピンクや黄色や藤色のキクが咲こうが、まっ赤なサルビアが咲こうが、暑苦しい八重咲きマリーゴールドが咲こうがヒルガオよりはましだろうと考えて、ブリキの種子缶の底に長いこと眠っていたMIX種をバラ播いてみることにしました。 同じくヘリオトロープとヒョウモン蝶 菜園仕事の1日を割いてコーンフリーの根を掘り起こし、縦横無尽に走り回るヒルガオの根を取り除き、そこらにあった堆肥をいれてMIX 種を播種しました。半ばやけ気味。MIX種は1~2週間ほどで次々に発芽して夏の終わりから秋にかけて白、ピンク、ブルー、紫とパステルカラーや控えめな黄色やオレンジ色の花が次々に咲きました。咲き乱れたといってもいいかもしれない。幸いなことにどぎつい赤や黄色の花の姿はなく、一年草の花々は秋の菜園を穏やかに飾ってくれました。 こうしてかつての無法地帯は花園(これぞ身びいきの極地!)に変身したのです。 しかし何と言っても最大の収穫は無邪気に咲いた花々が、一年草に対する私の根拠なき偏見をただしてくれたことがでした。 宿根草の草花に気を取られて、ずっと軽んじてきたアスターや矢車草、、カレンジュラやカリフォルニアポピー、かすみ草などの一年草の草花。 まさか私がアスターを栽培するなんて思わなかった!でもアスターって花色が豊富だし茎がしっかり直立するから姿がいい。 まさか私がかすみ草を栽培するなんて思わなかった!でもかすみ草は慎ましいけど派手な花の引き立て役には最高。 まさか私が・・・・・ 今年は自分でMIX種を購入して盛大にバラ播きました。今年の主役はコスモスでした。 白から濃い紅色まで様々な色合いの花を次々と咲かせたコスモスは、霜のおりた菜園でも楽しげに揺れています。 あのときMIX種を播かなかったら、私は生涯、青や白の気取った宿根草の世界に閉じこもっていたことでしょう。 さて来年はどんな花に出会えるのでしょうか、今から楽しみにしています。 MIX種がくれた楽しみ、思いがけず足許に転がっていたささやかな楽しみを大切にする。余生を楽しく送ろうとするシルバー世代にはこういう姿勢が必要なのかもしれません。 7月石垣島の箱庭果樹園でマンゴーが実った! 台風で2週間近く迷子になった末に北海道に到着、完熟を通り越して崩壊寸前ではあったが美味この上なし。来年は自分で収穫したいなー 相変わらずの島バナナ、伐り倒したバナナを株分けして2年目の収穫、バナナの栽培は野菜に近いのかもしれない。酸味があって美味この上なし。これもささやかな楽しみのひとつ
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4月 2024
ご案内「藤門弘の北海道フォト日記」は夢枕獏さんのホームページ『蓬莱宮』にも転載されていますので、そちらもごらんください。 |